時代を超えてよみがえる巨匠たちのレコード演奏会
(第43回プログラム)


主 催 SP・LPクラシックレコード音楽研究会 代表丹野井松吉
日 時 平成30年11月24日(土)
午後1時から午後6時半ごろまで
会 場 音pub Westminster house(電話 090-3345-2124)
東京都台東区蔵前三丁目17番4号 蔵前妙見屋ビル4階
地下鉄大江戸線蔵前駅下車3分、寿三丁目交差点1階花屋
会 費 1,000円


曲目と演奏

〜フィッシャー・ディ-スカウ〜
(1925-2012)
〜デムス〜(1928-)
〜バックハウス〜(1884-1969)
〜ベートーヴェン〜(1770-1827)

  1. 歌曲集
    遥かなる恋人に、アデライーデ、この暗い墓の中で、自然における神の栄光ほか
    フィッシャー・ディ-スカウ、デムス(1966)
  2. バックハウス
    1. (1)ピアノソナタ第23番へ短調OP57「熱情」
         (1959)
    2. (2)ピアノ協奏曲第5番変ホ長調OP73(皇帝)
         イッセルシュテット、ウイーン(1959)
    3. (3)ピアノソナタ第29番変ロ長調OP106
         「ハンマークラビア」(1959)
    4. (4)ピアノソナタ第30番ホ長調OP109(1961)
    5. (4)ピアノソナタ第32番ハ短調OP111(1961)
    6. (6)ディアベッリの主題による33の変奏曲ハ長調
         OP120(1954)

 今回は、まず、フィッシャー・ディ-スカウのベートーヴェンの歌曲を取り上げた。ベートーヴェンの歌曲は、彼の中期の後半の時期に多くが作曲されている。ベートーヴェンを理解するには、その数多い独唱曲を聴くべきであろう。リートは、作曲家の内面的な心の声が、音と言葉によって短い時間の中で語りつくされる。ここに、ベートーヴェンの赤裸々な希望、失望、憧れ、喜び、叫びが表され、ベートーヴェンの音楽の本質が凝集している。20世紀最高のドイツのバリトン歌手フィッシャー・ディ-スカウの表現は作曲家に誠実に向き合い、何よりも正確である。60年代の彼の声は若々しくそれでいて人間的な思いやりと温かみ、深さがある。まさに最高のベートーヴェンを聞かせてくれるのである。
 ついで第41回に引き続き、バックハウスにより、ベートーヴェンの中後期の演奏を聞く。ルソーやボルテールの著書を読み、フランス革命に共感し現実社会に目を向けていたベートーヴェンが、カントの哲学やシラーの思想に引かれるが、やがて、耳の病との闘うなか、その思索は、古代ギリシャ神話からショーペンハウエルやインド哲学の領域まで及んでいく。29番ハンマークラビアソナタから32番のソナタを経てディアベッリ変奏曲にいたる思索の道のりである。41回では、バックハウスの50年代前半の充実した演奏を聴いたが、今回は50年代後半から60年台にかけての演奏である。やや技巧の衰えはあるが、演奏は、より確信に満ち、自由闊達、融通無碍の円熟の境地である。ハンマークラビアソナタの終楽章を聴くと、52年のスタジオ録音より56年のカーネギーホールのライブ演奏を経て、この59年のボンのベートーヴェンハウスでのライブ演奏は、より自由度を増し、第4楽章はまさにディオニソスの舞踏である。バックハウスはこの曲をその2ヶ月前にも、ブザンソン音楽祭で演奏し、その録音もある。彼は、ここにいたって、いよいよ、ベ-トーヴェンがこの曲で表現しようとした古代ギリシャ悲劇とディオニソス的歓喜の世界を体現しているのである。ディアベッリ変奏曲には、特に超人的なリズムと旋律が繰り返し出てくるが、これはまさにインド哲学の宇宙と自我の合体を表現しようとしているかのようだ。この曲など、バックハウスの60年代の演奏録音のないのが残念である。

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